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東京高等裁判所 昭和60年(行ケ)65号 判決 1987年12月24日

アメリカ合衆国デラウエア州一九七一四 ニューアークペイパーミルロード五五五

原告

ダブリユ エル ゴア アンド アソシエーツ インコー ポレーテツド

右代表者

ジヨン エス キヤンベル

右訴訟代理人弁護士

宇井正一

島田康男

同弁理士

西舘和之

大阪府茨木市下穂積一丁目一番二号

被告

日東電気工業株式会社

右代表者代表取締役

鎌居五朗

右訴訟代理人弁護士

久保田穰

鎌田隆

増井和夫

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

この判決に対する上告のための附加期間を九〇日と定める。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  原告

「特許庁が昭和五七年審判第二号事件について昭和六〇年一月一八日にした審決を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決

二  被告

主文第一、二項同旨の判決

第二  請求の原因

一  特許庁における手続の経緯

原告は、名称を「テトラフルオロエチレン重合体の多孔性物品の製造方法」とする特許第一〇二六五一七号発明(昭和四六年五月二〇日、一九七〇年五月二一日のアメリカ合衆国への特許出願に基づく優先権を主張して特許出願、昭和五一年六月一四日出願公告、昭和五五年一二月二五日設定登録。以下「本件発明」という。)の特許権者であるが、被告は、原告を被請求人として本件発明の特許無効審判を請求し、昭和五七年審判第二号事件として審理された結果、昭和六〇年一月一八日、「特許第一〇二六五一七号発明の特許を無効とする。」との審決があり、その謄本は同年二月二〇日原告に送達された。なお、原告のため出訴期間として九〇日が附加された。

二  本件発明の要旨

テトラフルオロエチレン重合体からなる多孔性物品を製造するために、下記工程・・

(a)  ペースト成形押出方法によつて、約九五%以上の結晶化度を有するテトラフルオロエチレン重合体成形物品を押し出し、

(b)  前記成形物品から液体減摩剤を、前記液体減摩剤の蒸発温度より高くかつ前記重合体の結晶融点より低い温度で、前記成形物品を乾燥することによつて、除去し、そして

(c)  前記成形物品を前記重合体の結晶融点よりも低い温度度で、一以上の方向に、伸張する、を含む方法において、前記伸張工程において、前記成形物品に対し、単位時間当たりの伸張比率が一〇%/秒より大きな伸張操作を、前記重合体の結晶融点よりも低い昇温された温度で施し、それによつて、伸張された成形物品のマトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とすることを特徴とするテトラフルオロエチレン重合体の多孔性物品の製造方法。

(別紙図面(一)参照)

三  審決の理由の要点

1  本件発明の要旨は、前項記載のとおりである。

2  これに対して、請求人(被告)が本件特許の無効を申立てる理由として主張するところは、要約すると、

(一) 本件発明は、昭和四二年特許出願公告第一三五六〇号公報(以下「第一引用例」という。)、ソヴエト特許第二四〇九九六号明細書(以下「第二引用例」という。)、工学院大学研究報告第二四号(一九六八年五月発行)第六〇頁ないし第六九頁(以下「第三引用例」という。)等に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許は特許法第二九条第二項の規定に違反する、

(二) 昭和五〇年七月一日付手続補正は明細書の要旨を変更するものであるから、本件特許出願は特許法第四〇条の規定により昭和五〇年七月一日にしたものとなり、したがつて本件発明は甲第五号証(審判手続における書証番号)の刊行物に記載された発明と同一であるから、同法第二九条第一項第三号に該当する、

(三) 本件特許明細書には不備な記載があるから、本件特許は特許法第三六条第四項及び第五項(昭和六〇年五月二八日法律第四一号による改正前のもの)に規定する要件をみたしていない、

というものである。

3  そこで、本件特許が無効とされるべきものであるか否かについて検討する。

第一引用例には、四弗化エチレン樹脂多孔性構造物の製造法に関する技術が記載され、液状潤滑剤を含む未焼結の四弗化エチレン樹脂混合物を押出し成形し、成形品から液状潤滑剤を除去した後、成形品を少なくとも一方向に延伸すること、そして延伸されたものは更に三二七度c以上に加熱して焼結することが記載され、実施例として「未焼結の四弗エチレン樹脂粉末であるテフロンNo.(米国デユポン社製品)一〇〇〇gと約一五〇度c~約二五〇度cの問に沸点を持つた石油留分二〇〇gとを密閉容器に入れ容器を回転せしめて一様になるよう混合した。得られた混合物をラム式押出機に押出し厚さ六mm、幅一〇〇mmのストリツプとした。このストリツプをカレンダーロールにて押出方向と同方向および直角方向に圧延して〇・一mm厚のシートとした。このシートを一五〇度c~二〇〇度cの炉中を通して乾燥した後、二五〇%一方向に延伸し金属ドラムの表面に沿わせて約三五〇度cに加熱して白色不透明な四弗化エチレン樹脂シートを得た。」との記載がある。

また、第二引用例には、フトロプラスト-4Dと容易に揮発する造孔剤とをベースとする材料を、押し出し、大きな気孔率と優れた物理的、機械的性質を有するものを得るために乾燥後延伸することが記載され、実施例において、フトロプラスト-4Dにベンジンを混合し、ピストン型押出機によつて二五度cで押出成形して棒状物を製造し、乾燥してベンジンを除去した後、一五〇~三〇〇度cまで加熱し、初めの長さの一〇〇~三〇〇%引き延ばすことが記載され、また他の実施例において一〇〇~三〇〇度cまで加熱し、初めの長さの二五〇~四〇〇%引き延ばすことが記載されている。

さらに、第三引用例には、四弗化エチレン樹脂を延伸加工した場合の物性について記載され、そして四弗化エチレン樹脂の幅三〇mm、厚さ三mmの板状成形品を〇~一三〇度cの温度と五~二、〇〇〇%/分の速度で破壊するまで延伸加工することが記載されている。

4  そこで本件発明と第一引用例記載のものとを比較すると、未焼結テトラフルオロエチレン重合体が通常九五%前後の結晶化度を有することは周知の事実であるから、第一引用例記載の未焼結四弗化エチレン樹脂、すなわち未焼結テトラフルオロエチレン重合体が約九五%以上の結晶化度を有するものを含むことは明らかである。したがつて、両者は、ペースト押出成形法によつて、約九五%以上の結晶化度を有するテトラフルオロエチレン重合体成形物品を押し出し、その成形物品から液体減摩剤を、液体減摩剤の蒸発温度より高くかつ重合体の結晶融点より低い温度で乾燥することによつて除去し、その成形物品を前記重合体の結晶融点よりも低い温度で一以上の方向に伸張することよりなる多孔性物品の製造方法である点で一致し、両者の相違点は、前者が(1)成形物品に対し、単位時間当たりの伸張比率が一〇%/秒より大きな伸張操作を、前記重合体の結晶融点よりも低い昇温された温度で行うこと、及び(2)伸張された成形物品のマトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とすること、であるのに対し、後者はこれらの点について言及がないことにある。

次にこれら相違点について検討するに、まず(1)の点についてみると、一般に成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定しているものであつて、第三引用例にも、未焼結のものであることについての明示はないが、四弗化エチレン樹脂、すなわち、テトラフルオロエチレン重合体の板状成形物品について五~二、〇〇〇%/分、すなわち約〇・〇八~三三・三%/秒の伸張速度で伸張することが記載されているから、第一引用例に前記のとおり未焼結テトラフルオロエチレン重合体成形物品を伸張することが記載されている以上、本件発明において、伸張操作を行うに際してその伸張比率を一〇%/秒より大きな値に設定することは当業者が容易になしうることである。

また伸張操作を行う際の温度について検討すると、第二引用例には、未焼結テトラフルオロエチレン重合体の一つであるフトロプラスト-4Dについて、押出成形し、減摩剤としても作用するベンジンを乾燥によつて除去した後、テトラフルオロエチレン重合体の結晶融点より低い一五〇~三〇〇度cあるいは一〇〇~三〇〇度cの温度に加熱して伸張を行うことが記載されているから、本件発明において、伸張操作を結晶融点よりも低い昇温された温度で施す点に格別特徴があるということはできず、当業者ならば適宜なしうることである。

したがつて、本件発明における前記(1)の点は当業者ならば容易になしうることである。

次に、前記(2)の点についてみると、本件発明において、伸張された成形品のマトリツクス引張強さが五一四kg/cm2以上であることは、前記(1)に記載の条件、すなわち、伸張操作を一〇%/秒より大きな伸張比率及び重合体の結晶融点よりも低い昇温された温度で施すことによることの結果としてもたらされるものであるから、前記したように本件発明における(1)の点が、当業者ならば容易になしうることである以上、前記(2)の点も、その伸張の結果として得られる成形物品のマトリツクス引張強さを測定して決定したというにすぎないものである。したがつて、本件発明において、伸張された成形物品のマトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とすることも、当業者ならば容易になしうることである。

5  以上のとおりであるから、本件発明は、本件発明の優先権主張日(以下「優先権主張日」という。)前に頒布された第一引用例ないし第三引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、したがつて、本件特許は特許法第二九条第二項の規定に違反して特許されたものであるから、請求人(被告)の他の主張を検討するまでもなく、同法第一二三条第一項の規定によつて無効とする。

四  審決の取消事由

第一引用例ないし第三引用例には、審決認定の技術内容(前記三3参照)が記載されていることは認めるが、審決は、本件発明と第一引用例記載の発明とを対比判断するに当たり、両発明の相違点である「本件発明は焼結を要件としないものであるのに対し、第一引用例記載の発明は焼結を必須要件とするものであること」を看過し、相違点(1)についての認定、判断を誤り、かつ、右誤つた認定、判断を前提として、相違点(2)について、当業者ならば容易になしうることとしたものであるから、違法であり、取り消されるべきである。

1  相違点の看過

第一引用例には、未焼結の四弗化エチレン樹脂混和物の成形品を未焼結のままの状態で延伸し、この延伸状態で約三二七度c以上に加熱すること、及びこの一旦加熱した多孔性構造物をさらに延伸すること(第一頁右欄第二三行ないし第三二行)が記載されているが、約三二七度cという温度は四弗化エチレン樹脂の結晶融点、すなわち焼結温度であり、この温度以上に加熱するということは、取りも直さず焼結することを意味する。第一引用例記載の発明は、単に延伸ではなく、このような焼結処理によつて多孔性構造を維持しつつ機械的強度の改善を図つている(第三頁右欄第四行ないし第七行)ものである。

これに対し、本件発明は、第一引用例記載の発明のような焼結を(付加的に行うことはあつても)必須要件とするものではないから、両発明は、本件発明が焼結を要件としないものであるのに対し、第一引用例記載の発明は、焼結を必須要件とするものである点において相違している。

そして、第一引用例記載の発明は、延伸にとどまらず焼結まで行いながら、その実施例1(第六頁左欄第一〇行ないし第四三行)に記載された抗張力一・八~一・九kg/mm2、見かけ比重〇・八四、真比重二・一七から算出されるマトリツクス引張強さは四六五kg/cm2にすぎないのに対し、本件発明は焼結を要件とすることなく伸張の段階までの操作によつてテトラフルオロエチレン重合体(以下「PTFE」という。)成形物品の強度を五一四kg/cm2以上に高めているものであるから、両発明は、前記構成の相違によつて奏される作用効果の度合にも顕著な差異がある。

したがつて、審決には、本件発明と第一引用例記載の発明との相違点を看過して本件発明を容易に推考しうるものとした違法がある。

2  相違点(1)についての認定、判断の誤り

(一) 審決は、相違点(1)について、未焼結PTFE成形物品は、これを伸張する場合一般成形物品と同様の性質を有することを当然の前提として、「一般に成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定している」としている。

しかしながら、一般成形物品(汎用ポリマー)は、急速に伸張すると低伸度・低切断強度(切断しやすく、伸びにくい)を示し、緩徐に伸張すると高伸度・高切断強度(切断しにくく、伸びやすい)を示すことが知られており、優先権主張日当時、未焼結PTFE成形物品も一般成形物品と同様の伸張挙動を示すものであり、しかも、実際に伸張してみると、緩徐に伸張した場合でも容易に切断してしまうことが知られていたのである。

ところが、本件発明は、未焼結PTFE成形物品は、伸張速度を速くすると、強度は高くなり切断しにくくなるという一般成形物品とは正反対の特性を有することを見出し、その要旨とする伸張操作の条件を採用したものである。

本件発明の要旨とする、伸張比率を一〇%/秒より大きくすることがPTFE成形物品にとつていかに大きな値であり、予期しえない高い数値であるかは、昭和五三年特許出願公開第六〇九七九号公報(出願人ダイキン工業株式会社)に、本件発明は「PTFEフアンパウダーのペースト押出物を未焼結のまま一〇%/sec以上の高い延伸速度で延伸してマトリツクス引張強度五一四kg/cm2以上の多孔体を製造する方法に関するものであつて、未焼結ペースト押出物が高温下で延伸速度の極めて高い場合には切断することなく高度に延伸されるという極めて特異な性質の発見に基づくものである。」(第五欄第九行ないし第一六行)と記載されていることから明らかである。

このように、伸張速度(伸張比率)を増すことによつて高多孔性高強度のPTFE物品を切断することなく製造する本件発明は一般重合体の粘弾性挙動とは正反対であり、一般重合体の粘弾性挙動から容易に推考しうるものではない。

右の点に関し、被告は、PTFEの伸張を行おうとする当業者が伸張比率を適宜決定しようとする試みの中で、最初に通常の重合体に適用される伸張比率を適用してみることは自然であり、その伸張比率は、昭和三八年特許出願公告第二三四八九号公報(以下「周知例1」という。)及び昭和四一年特許出願公告第二一七九〇号公報(以下「周知例2」という。)の記載から明らかなように、一〇%/秒より大きいことは、優先権主張日当時の技術常識であつた旨主張する。

しかしながら、周知例1及び周知例2に記載された一〇%/秒を超える伸張比率の適用は、あくまでもポリエステル、ポリプロピレンといつた汎用ポリマーの溶融成形による一般成形充実体物品に対してのものであり、これらに対し、全く特異な伸張特性を示すPTFEの特殊構造のペースト成形物品にも同等に適用しうるということは、当時の技術常識からいつて考え難いことである。

本件発明は、汎用ポリマーとは著しく物性を異にし、熔融成形ができないPTFEのペースト成形物を伸張加工の対象とし、しかも一般成形物品のような充実体とは異なり、特殊な繊維質の微細構造からなる多孔質体を製造する方法に関するものであり、この点において汎用ポリマーはもとより、優先権主張日当時の未焼結PTFEの充実体の成形物を目的とする成形とも根本的にその目的を異にし、しかも汎用ポリマーの伸張挙動とは全く異なる伸張機構のもとに構造形成をなさしめるものであるから、汎用ポリマーやPTFEの単なる伸張加工や伸張試験における伸張比率をもつて本件発明の推考容易性を認定することはできない。

また、被告は、ドイツ連邦共和国第一〇九六五九二号公報及び「合成樹脂」第一二巻第一一号第七一六頁の記載に基づいて、一般の重合体においても伸張速度が大きいほど強度も増大する旨主張するが、これらの記載は、同一伸張倍率においては伸張比率の高い場合の方が伸張成形物品の伸張方向の引張強度が高くなること、また、伸張比率の低い場合の方が伸張成形物品の最高伸張倍率が高くなることの説明そのものであるにすぎず、本件発明の基本をなす、伸張比率が高い程伸張成形物品の最高伸張倍率が大きくなり、これによつて最高到達引張強度が高くなるという事実を教示するものではない。

(二) また、審決は、「第三引用例にも、未焼結のものであることについての明示はないが、四弗化エチレン樹脂、すなわちPTFEの板状成形物品について五~二、〇〇〇%/分、すなわち約〇・〇八~三三・三%/秒の伸張速度で伸張することが記載されているから、第一引用例に前記の未焼結PTFE成形物品を伸張することが記載されている以上、本件発明において、伸張操作を行うに際してその伸張比率を一〇%/秒より大きな値に設定することは当業者ならば容易になしうることである。」としている。

しかしながら、第三引用例に記載されているのは、本件発明におけるような所定の処理を施したPTFE成形物品を伸張することによつて高多孔性、高強度としたPTFE成形物品を製造する方法に係るものではなく、既に製造され、市販されている焼結された非多孔性の板状PTFE成形物品を破壊するまで延伸試験した結果にすぎないから、審決が第三引用例には未焼結のものであることについての明示はないと認定したのは誤りである。

また、第三引用例に記載された試験方法は、一定寸法及び形状の四弗化エチレン樹脂成形試験片を数段階の温度及びひずみ速度で延伸し、破壊させてからその試験片の引張り特性のような機械的特性、電気体積抵抗率のような電気的特性等を測定したものであつて、延伸時の温度は〇~一三〇度Cであり、ひずみ速度は五~二、〇〇〇%/分(〇・〇八三~三三・三%/秒)とされているが、これらの温度及びひずみ速度はあくまでも延伸試験条件として設定されているにすぎず、本件発明のように、PTFE成形物品を伸張によつて高多孔性化、高強度化するための製品製造の条件として採用しているものではない。

本件発明の製品であるPTFE多孔性物品の機械的強度はマトリツクス引張強さで五一四kg/cm2以上であるが、この値は最大引張応力から得られるのであり、最大引張応力を測定するためにはPTFE多孔性物品の試験材料の引張り(延伸)を行わなければならない。

このように、第三引用例は焼結された非多孔性の四弗化エチレン樹脂の板状成形物品の物性値を測定するため該製品の延伸実験を行つた結果の報告であり、そこで与えられている条件は、伸張(引張)速度を含め物性値測定実験の条件であるから、製品製造の条件である本件発明における伸張比率一〇%/秒という条件は第三引用例の記載から容易に設定しうることではなく、審決の前記認定、判断は誤りである。

(三) さらに、審決は、伸張操作を行う際の温度について、第二引用例のPTFEの結晶融点より低い一五〇~三〇〇度Cあるいは一〇〇~三〇〇度Cの温度に加熱して伸張するとの記載に基づき、「本件発明において伸張操作を結晶融点よりも低い昇温された温度で施す点に格別特徴があるということはできず、当業者ならば適宜なしうることである。」としている。

しかしながら、第二引用例は、フトロプラスト-4Dと造孔剤とから配合物材料を初めの長さの一〇〇~四〇〇%だけ引き延ばすことでそれ以前の方法とは違う(第一欄第六行ないし第九行)と記載されており、実施例でもその範囲での引き延ばしが行われているにすぎない。したがつて、第二引用例も第一引用例と同様に延伸の条件としては伸張比率ではなく、延伸倍率を取り上げていることが明らかである。

また、第二引用例には、優れた物理的・機械的性質を保持したままで高い気孔率(最高八五%どまりで本件発明の九七%に達しない。)が得られる(第一欄第九行ないし第一一行)と記載されているが、その実施例等をみても具体的に数値が記載されているのは気孔率のみであつて、その他の特性値、例えば強度の値については一切触れられていない。第二引用例には、多孔性重合体の用途として断熱用材料もしくは特に低い誘電性が要求されるものが示され、これらが格別大きな強度を要するものではないことからすると、第二引用例記載の発明において、たとえ高い強度が保持されていても、当時の技術水準からみて到底マトリツクス引張強さが五一四kg/cm2を超えるようなものではない。

したがつて、第一引用例と同様に延伸条件として延伸倍率を採用し、マトリツクス引張強さについて何ら示唆していない第二引用例における伸張時の温度の記載に基づいて本件発明を容易に推考しうるとした審決の認定、判断は誤りである。

3  相違点(2)についての認定、判断の誤り

本件発明の骨子は、最終PTFE多孔性物品のマトリツクス引張強さが五一四kg/cm2以上となるように中間PTFE成形物品を伸張すること、その伸張比率が毎秒一〇%より大きいことである。

審決は、本件発明において、「伸張された成形品のマトリツクス引張強さが五一四kg/cm2以上であることは、前記(1)に記載の条件(中略)の結果としてもたらされるものであるから、前記したように、本件発明における(1)の点が、当業者ならば容易になしうることである以上、前記(2)の点も(中略)当業者が容易になしうることである。」としている。

しかしながら、審決の相違点(1)についての認定、判断が誤りであることは前記2において主張したとおりであるから、右誤つた認定、判断を前提として、相違点(2)について、当業者が容易になしうるとした審決の認定、判断は誤りというべきである。

第三  請求の原因に対する認否及び被告の主張

一  請求の原因一ないし三の事実は認める。

二  同四の審決の取消事由は争う。審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告の主張する違法はない。

1  第一引用例には、PTFEを未焼結状態で延伸(伸張)して多孔性構造物とし、しかる後約三二七度C以上に加熱して焼結する技術が記載されている(第一頁右欄第二三行ないし第三一行、第六頁左欄第一一行ないし第二三行)。審決は、この技術内容を引用し、そのうち焼結前の段階においてPTFEが結晶融点以下の温度で伸張され多孔性物品にされている点を本件発明と対比判断しているのであつて、伸張工程の後に焼結工程があるか否かは全く関係がない。

原告が、審決は第一引用例記載の発明と本件発明とが焼結を必須要件とするか否かにおいて相違する点を看過したと主張する点は、審決の右趣旨を誤解したことによるものであつて理由がない。

2(一)  審決は、重合体を延伸しようとする場合、延伸速度を適宜変化させて最適の条件を選択することは、当業者が常にやつていることで、単なる実験条件にすぎないという趣旨で、「一般に成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定している」と認定したものであつて、PTFEの性質が他の重合体と同じであるという前提で、右の認定、判断をしているものではない。

PTFEの伸張を行おうとする当業者が伸張比率を適宜決定しようとする試みの中で、最初に通常の重合体に適用される伸張比率を適用してみることは自然である。そして、その伸張比率が、周知例1及び周知例2の記載から明らかなように、一〇%/秒より大きいことは優先権主張日当時の技術常識であつた。すなわち、周知例1の教示する最低延伸速度一、〇〇〇%/分(一六・七%/秒)は本件発明の伸張比率の下限である一〇%/秒と同レベルの値であり、また、周知例2に記載された八三・三%/秒という値は、本件明細書の発明の詳細な説明には、伸張比率五〇〇%/秒を標準的に使用していること(本件発明の特許出願公告公報第一六欄第三四行ないし第一八欄末行の例3(e)、第二〇欄第二四行ないし第二四欄末行の例5、第三四欄第三二行ないし第三六欄の例14参照)からみて、本件発明における伸張比率と大きく相違しているわけではない。

審決は、このような重合体一般の延伸技術に従つて、本件発明の延伸条件を設定することは当業者にとつて容易になしうるものであるとしたのであつて、審決の認定、判断に誤りはない。

原告は、一般成形物品は急速に伸張すると低伸度、低切断強度を示し、緩徐に伸張すると高伸度、高切断強度を示すのに対し、未焼結PTFE成形物品は、一般重合体と異なり、伸張速度を速くすると、強度は高くなり切断しにくくなるという一般成形物品とは正反対の特性を有する旨主張する。

審決は、前述のとおり、PTFEの性質が他の重合体と同じであることを前提として前記認定、判断をしているのではないから、その特性の違いは審決の認定、判断とは関係がないが、原告の主張する一般重合体の性質についての理論は事実に反し、誤りである。すなわち、周知例1には、「フイルムは先ず横方向へ、鎖の部分の分子配向を発展させるのに充分高い速度割合で伸張させ、縦方向の延伸中にフイルムの物理的性質の水準の最大の増加が生成できるような風に晶子を生成させなければならない。毎分少くとも一〇〇〇%の最低延伸速度が望ましい。」(第二頁左欄第二九行ないし第三三行)と記載されているから、周知例1は一般の重合体においても延伸速度が低いと充分に配向せず、したがつて、物理的性質(強度等)が最大の水準に増加しないことを教示しており、また、ドイツ特許公告第一〇九六五九二号公報記載の発明は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリルニトリル、ポリアミド、ポリエステル等の一般的な重合体に適用される(第六欄第一行ないし第五行)が、右公報には、「フイルムの配向度、すなわち、機械的性質の改善度は、延伸速度及び延伸寸法に依存する。所定の延伸比をフイルムに与える速度が大きければ大きい程、得られる分子配向度、すなわち、機械的性質の改善度は大きくなる。」(第二欄第四三行ないし第五一行)と記載されており、さらに、「合成樹脂」第一二巻第一一号第七一六頁には、ポリエチレンとポリプロピレンという一般的な重合体に関する引張速度と引張強さの関係が第2図ないし第6図として示されているが、いずれの図においても、引張強さ(曲線の頂点の引張応力値)は、引張速度が大きいほど高くなつていることから、一般の重合体においても、伸張速度が大きいほど強度も増大することが明らかである。

なお、原告が引用する昭和五三年特許出願公開第六〇九七九号公報の記載は、その発明者が公知例に通じていなかつたことを意味するにとどまり、それによつて優先権主張日当時の技術水準が定まるものではない。

(二)  審決は、重合体の延伸処理において伸張比率をどの程度にするかは当業者が適宜決定していることであるとの前提の下に本件発明の一〇%/秒以上という値を問題としたものであり、第三引用例の存在は審決の結論のための必須の前提ではない。

しかも、審決は、「第三引用例にも、未焼結のものであることについての明示はないが」と述べているように、未焼結体か焼結体かを問題にすることなく、通常採用されるであろう単位時間当たりの伸張比率の一公知例としてPTFEの延伸例である第三引用例の〇・〇八~三三・三%/秒という値を引用しているのであるから、第三引用例に記載されているものが焼結されたPTFEであつて未焼結体ではないことを理由に審決の認定を争う原告の主張は審決を誤解している。

また、第三引用例は、表題に「四弗化エチレン樹脂の延伸加工がその物性に及ぼす影響について」と記載し、また、「1. 緒言」において「繊維状の高分子材料において、延伸加工が、その物性に与える影響については、いくつかの報告がある。(中略)本研究は既報に引続いて四弗化エチレンの延伸加工が、加工温度と関連して、どのようにその物性に影響するかを実験的に明らかにするものである。すなわち四弗化エチレンの(中略)成形品を(中略)各種ひずみ速度で破壊するまで延伸加工した場合、加工後の材料の分子鎖の並列度、結晶化度、引張特性、せん断特牲、硬さ、電気体積抵抗率、および試片断面の形状寸法がどのように変化するかを、延伸方向に関速して実験的に明らかにし、あわせてこの樹脂の延伸加工による改質の基礎資料を求めようとしたものである。」(第六○頁第二五行ないし第三四行)旨記載し、この文献が重合体の延伸加工による改質のための研究報告であることを明らかにし、「3. 実験の結果および考察」において「3.2 延伸加工後の引張特性、(1)方向特性、(2)各ひずみ速度での延伸加工後の引張特性」(第六三頁第三〇行ないし第六六頁第14図、第15図下第一行)等で、延伸加工がどのような特性の変化をもたらすかを記載し、「4 結論」においても、延伸加工によつて「延伸方向の引張り強さは三倍程度強力化され」(第六九頁第1表下第四行、第五行)ると記載している。第三引用例は実験結果の記載であるが、実験結果により得られた知見が製造方法に利用できないという理由は全くない。むしろ、あらゆる製造方法は実験に基づいて開発されるのであり、特許明細書の実施例も実験に外ならない。ある重合体の引張強さを測定したところ、一定範囲のひずみ速度(延伸速度)のもとに、高い引張強さが認められ、そのことが記載されたとすれば、その事実から、当該重合体の延伸加工に際し、その延伸速度を適用することは当然のことである。

したがつて、原告主張のように、第三引用例が物性試験のための延伸を開示しているものであつても、第三引用例を第一引用例と組合わせ、一〇%/秒より大きな伸張比率という要件には何ら進歩性がないとした審決の判断は正当である。

(三)  審決は、第二引用例を、PTFEを延伸する際の温度として一五〇~三〇〇度Cあるいは一〇〇~三〇〇度Cの温度が採用されている例として、かつ、その限度でのみ引用している(原告は第二引用例に右記載があることを認めている。)のであつて、原告主張のような単位時間当たりの伸張比率や強度が第二引用例に記載されていないことは審決の認定、判断とは関係がない。

第二引用例記載の発明がPTFEの延伸による多孔性物品の製法であることは原告も認めているところであり、第一引用例記載の発明と本件発明とは共通の技術であるから、第二引用例に記載された前記延伸温度を第一引用例記載の延伸工程と組合せることには何の障害もない。

3  本件発明が一〇%/秒より高い伸張比率並びに五一四kg/cm2以上のマトリックス引張強さを構成要件とすることは認めるが、原告主張の趣旨が五一四kg/cm2以上の数値になるような特別の伸張の仕方が本件発明の構成要件であるとするならば、そのような伸張の仕方は本件発明の要旨ではないことは勿論、明細書に全く記載されていないから、明らかに誤りである。

そして、相違点(1)についての審決の認定、判断に誤りがないことは前記2において主張したとおりであるから、この認定、判断を前提として、相違点(2)について、当業者が容易になしうることとした審決の認定、判断に誤りはない。

第四  証拠関係

証拠関係は、本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりであるから、ここにこれを引用する。

理由

一  請求の原因一 (特許庁における手続の経緯)、二 (本件発明の要旨)、及び三 (審決の理由の要点)の事実は、当事者間に争いがない。

二  そこで、原告主張の審決の取消事由の存否について判断する。

1  成立に争いのない甲第二号証によれば、本件発明は、約五%以上の非結晶含有率を有し、かつ、小繊維により相互に連結された結節を有することを特徴とするマイクロ構造を有する多孔質形態のPTFE材料の製造方法に関するもの(本件発明の特許出願公告公報第二欄第七行ないし第一一行)であつて、PTFE、特にポリテトラフルオロエチレンは、化学的に不活性であることと、望ましい物理的性質(防水性、電気絶縁能力等)を有していることにより、ますます用途を拡大しているが、多孔質物品の分野においては、物品を多孔質にすること、及びその状態を保持し、かつ、適当な強さを与えることが極めて困難であり、この解決のため、成形に先立つてこの重合体に充填材を添加し、次いで成形後にこの充填材を溶剤を使用して成形物品から溶かし出すか、又はこの充填材を溶融、あるいは燃焼することにより除去するなどの方法も考察されているが、これらのプロセスの諸工程が時間を消費するばかりでなくコストが高すぎる(同欄第二一行ないし第三欄第一行)問題があつたとの知見に基づき、PTFEから高度に多孔性の材料を生産する経済的方法及び結果として得られる製品に高強度、高密度を与える方法を提供すること(第三欄第三行ないし第一二行)を技術的課題とし、これを達成するため、本件発明の要旨とする構成を採用し(同欄第三九行ないし第四欄第一八行)、その結果、(a) 少なくとも一方向において五一四kg/cm2以上のマトリツクス引張強さを有し、(b) 小繊維により互に連結された結節からなるミクロ構造を有し、前記小繊維はポイド空孔によつて互に分離されており、(c) 気孔率は四〇ないし約九七%であり、(d) 前記多孔性物品がその結晶融点より高い温度に加熱される以前には、その結晶化度が約九五%より大きく、そして、(e) 前記多孔牲物品がその結晶融点より高い温度に加熱された後では、その結晶化度が約九五%よりも小さい(第三欄第一六行ないし第二六行)という多孔質、高強度のPTFE物品を製造することができる作用効果を奏するものであることが認められる。

一方、成立に争いのない甲第三号証によれば、第一引用例記載の発明は、四弗化エチレン樹脂(四弗化エチレン樹脂がPTFEであることは、当事者間に争いがない。)を主体とする多孔性構造物の製造法及びそれを用いて得られる構造物に関するもの(第一頁左欄第一二行ないし第一四行)であつて、未焼結の四弗化エチレン樹脂は押出工程でダイから押し出される時やロールで圧延される時や烈しく攪拌を受けた時のように剪断力を受けると微細な繊維状組織となる傾向があり、液状潤滑剤を含む樹脂はさらに容易に繊維化するものであり、この発明の構造物を得るには、この繊維状化が重要であるので、押し出し又は圧延もしくは両者を含む方法で成形する必要がある(第二頁右欄第九行ないし第一六行)との知見、及び未焼結成形品はこのままの状態では機械的強度が低く、僅かな外力で伸びたり、切れたり、破れたりし、また、構造中の空隙部は僅かな加圧で容易に多孔性構造が失われるような極めて不安定なものであり、さらに、このまま焼結温度である約三二七度C以上に加熱するとこの多孔性構造は失われ融着した連続組織となる(第三頁左欄第三二行ないし第四六行)との知見に基づき、特許請求の範囲(第一項)記載の「液状潤滑剤を含む未焼結の四弗化エチレン樹脂混和物を押出または圧延または両者を含む方法にて成形した後、未焼結状態にて少くとも一方向に延伸した状態で約三二七度C以上に加熱することを特徴とする多孔性構造物の製造法」(第六頁右欄第三六行ないし第四一行)なる構成を採用したものであるが、右構成中の延伸工程の必要性について、第一引用例には、「このようにして得られた潤滑剤を含む未焼結成形品は次に少くとも一方向に延伸される。この延伸は潤滑剤を含む状態でも、また蒸発、抽出等によつて除去した後でも行う事が出来る。この延伸工程は本発明の最も重要な点である。すなわち、この延伸によつて次の工程である約三二七度C以上の加熱を行つても多孔性を失わない構造が与えられるのであり、またこの加熱によつて多孔性構造は強化され安定なものとなる」(第三頁左欄第九行ないし第一七行)のであり、「本発明の多孔性構造物の製造においては少くとも一方向に延伸した状態で約三二七度C以上に加熱される。延伸は通常二〇%以上、望ましくは四〇%以上行われる。」(第三頁右欄第一行ないし第四行)と記載されていることが認められる。

また、成立に争いのない甲第四号証によれば、第二引用例記載の発明は、フトロプラスト-4D(フトロプラスト-4DがPTFEであることは当事者間に争いがない。)をベースとする多孔性重合体材料の製造方法に関するものであつて、第二引用例には、その特許請求の範囲は「フトロプラスト-4Dと、押出後に乾燥と熱処理により容易に揮発する造孔剤とをベースとし、大きな気孔率と優れた物理的、機械的性質を有する材料を得るために、該材料を乾燥後延伸することを特徴とする多孔性重合体の製造方法」(第二欄第二六行ないし第四欄第三行)であつて、フトロプラスト-4Dと例えばベンジンのような容易に揮発する造孔剤から成る配合物を押し出した後、乾燥及び熱処理することによる公知の多孔性重合体材料の製造方法(第一欄第一行ないし第五行)において、乾燥後に材料を初めの長さの一〇〇~四〇〇%だけ引き延すこと(同欄第七行ないし第一〇行)を特徴とし、その結果、優れた物理的、機械的性質を保持したままで六〇~八五%の高い気孔率を有する材料を得ることができる(同欄第一〇行ないし第一三行)旨記載され、また、実施例1として、プトロプラスト-4Dとベンジンとの混合ペーストから棒状物を押出し加工によつて成形し、乾燥してベンジンを除去した後、棒状物を一五〇~三〇〇度Cまで加熱し、初めの長さの一〇〇~三〇〇%だけ引き延ばすことによつて六二~八一%の気孔率を有する材料が得られること(同欄第一七行ないし第二欄第二行)、実施例2として、実施例1と同様のペーストから押出し成形によつて得られた棒状物を一〇〇~三〇〇度Cまで加熱し、初めの長さの二五〇~四〇〇%だけ引き延ばすことによつて七七~八五%の気孔率を有する材料が得られること(第二欄第三行ないし第一〇行)、実施例3として、実施例2のようにして得られた棒状物を室温で二〇〇~二五〇%だけ引き延ばした後二〇〇度Cまで加熱して熱固定することによつてほぼ七五%の気孔率を有する材料が得られること(同欄第一一行ないし第一六行)が記載されていることが認められる。

以上の認定事実によれば、本件発明、第一引用例記載の発明及び第二引用例記載の発明は、いずれも、未焼結PTFE成形物品を伸張加工することにより、より多孔性で、かつ機械的強度の改善されたものとする技術であることにおいて共通していることが明らかである。

2  原告は、審決は本件発明と第一引用例記載の発明を対比判断するに当たり、両発明の相違点である「本件発明は焼結を要件としないものであるのに対し、第一引用例記載の発明は焼結を必須要件とするものであること」を看過した旨主張する。

前記1の認定事実によれば、本件明細書にはPTFE成形物品を押し出し成形し、特定の条件をもつて、成形物品から液体減摩剤を除去し、かつ、成形物品を一方向以上に伸張して多孔性物品を製造する技術が開示されているのに対し、第一引用例には液状潤滑剤(本件発明の「液体減摩剤」に相当する。)を含む未焼結の四弗化エチレン樹脂(本件発明の「PTFE成形物品」に相当する。)を押し出し成形し、成形物品から液状潤滑剤を除去した後、又は除去せずに、成形品を少なくとも一方向に延伸して多孔性構造物(本件発明の「多孔性物品」に相当する。)を製造する技術及びこの多孔性構造物を三二七度C以上に加熱して焼結し、多孔性構造物を固定する技術が開示されているということができる。

そして、前記審決の理由の要点(請求の原因三)によれば、審決は、第一引用例記載の右四弗化エチレン樹脂多孔性構造物の製造方法に関する技術内容から液体潤滑剤を含む未焼結の四弗化エチレン樹脂混合物を押し出し成形し、その成形物品から液体潤滑剤を除去した後に少なくとも一方向に延伸して多孔性構造物とする技術内容を引用して本件発明と対比し、「両者は、ペースト押出成形法によつて、約九五%以上の結晶化度を有するPTFE成形物品を押し出し、その成形物品から液体減摩剤を、液体減摩剤の蒸発温度より高く、かつ重合体の結晶融点より低い温度で乾燥することによつて除去し、その成形物品を前記重合体の結晶融点よりも低い温度で一以上の方向に伸張することによりなる多孔性物品の製造方法である点で一致」すると認定したものであり、右多孔性物品をさらに三二七度C以上の温度で加熱焼結してその多孔性構造を固定することまでを含めて第一引用例記載の技術内容を引用して本件発明と対比し、両発明の構成上の一致点及び相違点を認定しているものではないから、第一引用例記載の発明が右多孔性物品の製造に引続く焼結工程を必須の工程としていることは、右対比判断には関係のない事項である。

原告は、第一引用例記載の発明は、延伸にとどまらず焼結まで行いながら、その実施例1に記載されたもののマトリックス引張強さを計算すると四六五kg/cm2にすぎないのに対し、本件発明は焼結を要件とすることなく伸張の段階までの操作によつてPTFE成形物品の強度を五一四kg/cm2以上に高めているものであるから、両発明は前記構成の奏される作用効果の度合にも顕著な差異がある旨主張するが、前掲甲第三号証によれば、第一引用例は、伸張された成形物品のマトリツクス引張強さについて何ら述べていないことが認められ、原告主張の点は両発明の相違点(2)に帰着するから、これをもつて審決が両発明の相違点を看過したとすることはできない。

したがつて、審決には原告主張の相違点を看過した誤りは存しない。

3(一)  原告は、審決は相違点(1)について、未焼結PTFE成形物品はこれを伸張する場合一般成形物品と同様の性質を有することを当然の前提として、「一般に成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定している」と認定、判断しているが、審決の右認定、判断はその前提において誤つている旨主張する。

しかしながら、前記審決の理由の要点によれば、審決は、未焼結PTFEの性質が他の重合体の性質と同じであるという認定をしているものではなく、「単位時間当たりの伸張比率が一〇%/秒より大きい」という伸張比率は一般の重合体成形物品を伸張する場合の周知技術であるとの理解を背景に、一般に重合体成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定しているものであるとし、さらに、後記(二)認定の第三引用例の技術内容を引用して、PTFE成形物品についても伸張加工することが第一引用例で知られている以上、これを伸張加工する場合に本件発明の要旨とする「一〇%/秒より大きい」という値を設定することは容易になしうる事項であると認定、判断しているのである。

そして、成立に争いのない乙第一号証によれば、周知例1記載の発明は、ポリエステルフイルムの延伸方法に関するものであつて、その延伸方法は、特許請求の範囲記載のとおり、融解した重合体線状テレフタレートエステルを押出して、実質的に無定形のフイルムを形成させ、押出方向に垂直な方向に於て分子配向が起る温度に於て、フイルムの最初の幅の少くとも二・五倍程度までそのフイルムを延伸し、ついでフイルムの押出方向に於て分子配向が起る温度に於てフイルムの長さの少くとも二・五倍程度までフイルムを延伸することからなる方法に於て、最初の延伸は毎分少くとも一、〇〇〇%の速度であり、第二の延伸は毎分少くとも六〇、〇〇〇%の速度であることを特徴とする前記の方法」(第五頁右欄第三七行ないし第四五行)であることが認められ、成立に争いのない乙第二号証によれば、周知例2記載の発明は、二軸延伸ポリプロピレンフイルムの製法に関するものであつて、その製法は、特許請求の範囲記載のとおり、「溶融してフイルム状に押出し成型したポリプロピレンフイルムを縦方向に延伸し、次いで横方向に延伸するに際して縦方向の延伸倍率は横方向の延伸倍率の〇・五ないし〇・八倍の範囲で延伸し、上記のごとくして得られた二軸延伸ポリプロピレンフイルムにさらに五、〇〇〇%/分以上の延伸速度で縦方向に二・〇倍以下一・一倍以上延伸することを特徴とする二軸延伸ポリプロピレンフイルムの製法」(第四頁右欄第一六行ないし第二四行)であることが認められ、これを毎秒の伸張比率に換算すると、周知例1記載の発明の最初の延伸における伸張比率は一六・七%/秒以上であり、周知例2記載の発明における伸張比率は八三・三%/秒以上であるから、優先権主張日当時一般の成形物品の伸張において単位時間当たりの伸張比率が一〇%/秒より大きいという値は普通に採用される範囲のもの、すなわち周知技術といえるから、当業者であればPTFEの伸張においてもまずこの伸張比率の適用を試みることは適宜なしうることというべきである。

原告は、本件発明は未焼結PTFE成形物品が伸張速度を速くすると強度は高く切断しにくくなるという一般成形物品とは正反対の特性を有することを見出し、その要旨とする伸張操作の条件を採用したものであるから、一般重合体の粘弾性挙動から容易に推考しうるものではない旨主張する。

しかしながら、本件発明は、PTFE成形物品の伸張工程において、一〇%/秒より大きな伸張操作を行うことを要件とするPTFE成形物品の製造方法であり、未焼結PTFE成形物品を伸張加工することにより多孔性物品となす技術は既に第一引用例及び第二引用例記載の発明により優先権主張日当時当業者に知られていたことは前記1認定のとおりであるから、公知の未焼結PTFE成形物品の伸張加工において、その単位時間当たりの伸張比率についての数値を設定するに際し、まず一般の重合体成形物品の伸張加工において設定されている伸張比率についての数値の適用を試みることは当業者にとつて当然のことというべく、その数値が前記周知例1及び周知例2に示されている程度のものである以上、その中から実験的に未焼結PTFE成形物品に適する伸張比率の値を選択することは、当業者にとつて容易に設定しうる数値にすぎないというべきである。そして、右作業の結果、未焼結PTFE成形物品の粘弾性は一般の重合体成形物品の粘弾性のそれと異なるものであり、両者は、伸張加工時に異なる挙動を示すものであることが新たに判明したとしても、そのことが右作業による未焼結PTFE成形物品に適する伸張比率の値の選択設定が容易であるかどうかの判断に影響を与えるものではないから、原告の前記主張は理由がない。

また、原告は、昭和五三年特許出願公開第六〇九七九号公報(甲第六号証)の記載を援用してPTFE成形物品にとつて伸張比率を一〇%/秒より大きくすることは予期しえない高い数値である旨主張する。

なるほど、成立に争いのない甲第六号証によれば、右公報には本件発明について、「PTFEフアンパウダーのペースト押出物を未焼結のまま一〇%/sec以上の高い延伸速度で延伸してマトリツクス引張強度五一四kg/cm2以上の多孔体を製造する方法に関するものであつて、未焼結ペースト押出物が高温下で延伸速度の極めて高い場合には切断することなく高度に延伸されるという極めて特異な性質の発見に基づくものである。」(第五欄第九行ないし第一六行)と記載されていることが認められる。しかしながら、未焼結PTFE成形物品の伸張時挙動が一般の重合体成形物品とは異なるものであることが予測できないものであつたとしても、第一引用例及び第二引用例、並びに周知例1及び周知例2に基づいて、本件発明における単位時間当たりの伸張比率についての設定を容易と認定、判断することに何らの影響も受けないことは、前記説示から明らかであるから、原告の右主張は理由がない。

この点に関して、原告は、本件発明は汎用ポリマーとは著しく物性を異にし、熔融成形ができないPTFEペースト成形物を伸張加工の対象とし、しかも一般成形物品のような充実体とは異なり、特殊な繊維質の微細構造からなる多孔質体を製造する方法に関するものであり、この点において汎用ポリマーはもとより優先権主張日当時の未焼結PTFEの充実体の成形物を目的とする成形とは根本的にその目的を異にし、しかも汎用ポリマーの伸張挙動とは全く異なる伸張機構のもとに構造形成をなさしめるものであるから、汎用ポリマーやPTFEの単なる伸張加工や伸張試験における伸張比率をもつて本件発明の推考容易性を認定することはできない旨主張する。

しかしながら、優先権主張日当時公知の第一引用例及び第二引用例記載の発明は、未焼結PTFE成形物品を伸張加工することにより、より多孔性で、かつ機械的強度の改善されたものとする技術であることにおいて本件発明と共通していることは前記1認定のとおりであり、原告主張のような性質を有するPTFE成形物品の製造自体が新規な技術ではない以上、原告主張の点は前記の認定、判断を左右するものではない。

したがつて、「一般に成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定している」との審決の前記認定、判断に誤りはない。

(二)  原告は、第三引用例に記載されているものは、既に製造され、市販されている焼結された非多孔性の板状PTFE成形物品の物性値を測定するため、該物品を破壊するまで延伸試験した結果にすぎず、そこで与えられている条件は、伸張(引張)速度を含め物性値測定実験の条件であるから、製品製造の条件である本件発明における伸張比率一〇%/秒という条件は第三引用例の記載から容易に設定しうることではない旨主張する。

しかしながら、前記審決の理由の要点によれば、審決は、前記(一)認定のとおり、一般に成形物品を伸張する場合、伸張比率をどの程度にするかは当業者が必要に応じて適宜決定しているものであるとした上、さらに第三引用例から、四弗化エチレン樹脂、すなわちPTFEの板状成形物品について五~二、〇〇〇%/分、すなわち約〇・〇八~三三・三%/秒の伸張速度で伸張するという技術内容を引用して、それが未焼結PTFEの成形物品であるか、焼結したPTFEの成形物品であるか明らかではないが、第三引用例に第一引用例記載の発明と同種の重合体の成形物品について特定の伸張比率で伸張を行つた例が記載されている以上、第一引用例記載の発明と同じ未焼結PTFE成形物品の伸張加工を行うものである本件発明において、伸張操作を行うに際して、第三引用例に記載された伸張条件、なかんずく伸張比率をまず適用してみることは当業者であれば当然試みることであり、その試みの中から、第三引用例記載の伸張比率の値を含む一〇%/秒より大きいという値に設定することは当業者であれば格別の創意を要することではない、と認定、判断しているのである。

そして、成立に争いのない甲第五号証によれば、第三引用例は、山口章三郎・太田泰正「四弗化エチレン樹脂の延伸加工がその物性に及ぼす影響について」と題する技術論文であつて、その目的について、「本研究は(中略)四弗化エチレンの延伸加工が、加工温度と関連して、どのようにその物性に影響するかを実験的に明らかにするものである。すなわち四弗化エチレンの幅三〇mm、厚さ三mm程度の板状の成形品を〇~一三〇度Cの各温度と、五~二、〇〇〇%/minの各種ひずみ速度で破壊するまで延伸加工した場合、加工後の材料の分子鎖の並列度、結晶化度、引張特性、せん断特性、硬さ、電気体積抵抗率、および試片断面の形状寸法がどのように変化するかを、延伸方向に関連して実験的に明らかにし、あわせてこの樹脂の延伸加工による改質の基礎資料を求めようとしたものである。」(第六〇頁第二八行ないし第三四行)と記載され、実験は、島津オートグラフを用いて、一定伸び速度で引張り、荷重-延び曲線を自動的に記録させ、切断するまで延伸加工する方法を用い、延伸加工の温度は〇度C、一〇度C、二〇度C、四〇度C、八〇度C、一三〇度Cの六段階、また引張りひずみ速度(伸張比率)を二〇度C、一三〇度Cにおいて一・二五%/分(〇・〇二%/秒)、五〇%/分(〇・八三%/秒)及び一二五〇%/分(二〇・八%/秒)とし(第六一頁第1図下第六行ないし第九行)、実験の結果、第7図(別紙(二)参照)に示すように、一三〇度CにおけるPTFEの延伸ひずみ速度(伸張比率)が前記三例中最も大きい二〇・八%/秒の場合にひずみ(破断伸び)及び引張応力とも最大に達すること、第11図(別紙(二)参照)に示すように、一三〇度Cにおいて前記三例の伸張比率で延伸処理したものの二〇度Cにおける引張試験の結果を現すY方向(延伸加工方向と同方向)の引張応力-ひずみ曲線からみて、二〇・八%/秒の場合に破断伸び及び引張強さが高くなつていることが記載され、さらに結論として「一般的に延伸加工によつて分子鎖は延伸方向に並列配向し、結晶化度も少しく高くなり、延伸方向の引張り強さは三倍程度強力化され」(第六九頁第1表下第四行、第五行)と記載されていることが認められる。

したがつて、当業者は、第三引用例の記載に基づき、PTFE成形物品は延伸条件を選択して延伸することにより引張強さが強化された製品とすることができ、その場合、PTFEの結晶融点よりも低い昇温された温度である一三〇度Cでは二〇・八%/秒程度の伸張比率を適用することが有利であると理解できるというべきであり、実験結果の報告であるからといつて、実験結果によつて得られた知見を製造方法に利用できない理由はなく、第一引用例により公知の未焼結PTFEの成形物品の伸張加工において、伸張操作を行うに際して第三引用例に記載された伸張条件、特に伸張比率の適用を試み、その試みの中から伸張比率を一〇%/秒より大きな値に設定することは当業者ならば容易になしうることというべきであり、したがつて、審決の前記認定、判断に誤りはない。

(三)  第二引用例記載の発明の技術内容は前記1認定のとおりであり、右認定事実によれば、第二引用例記載の発明は、未焼結PTFEと減摩剤としても作用するものと解されるベンジンのような造孔剤との配合物を押し出し成形した後、乾燥によつてベンジン等を除去して得られる成形物品を伸張加工し、しかる後に熱処理する方法によつて、高い気孔率を持ち、かつ、物理的・機械的性質の改善された成形物品を得るものである点で、本件発明や第一引用例記載の未焼結PTFE成形物品からの多孔性成形物品の製造方法と解決すべき技術的課題及び使用原料並びに基本的な製造工程を同じくする同種の技術であると解することができる。

そして、第二引用例には、前記1認定の実施例1及び実施例2の記載があり、この記載によれば、未焼結PTFE成形物品の伸張加工は一〇〇~三〇〇度G程度の昇温条件下に行うことが好ましいことは優先権主張日当時既に知られていたというべきところ、前掲甲第二号証及び甲第三号証によれば、未焼結PTFEの結晶融点は三二七度Cであることが認められるから、第二引用例記載の右一〇〇~三〇〇度Cという引き延ばし温度は未焼結PTFEの結晶融点より低い昇温された温度に相当するということができる。

してみると、第二引用例記載のPTFE成形物品の製造方法と同種の製造方法に関する本件発明においても、その伸張加工工程における伸張操作を未焼結PTFEの結晶融点よりも低い昇温された温度で行うことは当業者であれば適宜なしうることというべきである。

原告は、審決が、第一引用例と同様に延伸条件として延伸倍率を採用し、マトリツクス引張強さについては何ら示唆していない第二引用例における伸張時の温度の記載に基づいて本件発明を容易に推考しうるとした認定、判断は誤りである旨主張する。

原告が主張するように、第二引用例には延伸条件として伸張倍率が記載され、伸張比率についての記載はない。しかしながら、本件発明の方法が特定の伸張比率での伸張を行うために第二引用例記載の発明とは異なる伸張操作温度を採用するものではない以上、未焼結PTFE成形物品の伸張に際して同様に未焼結PTFE成形物品の伸張操作に既に用いられている温度条件を採択し、設定することの容易性の判断が第二引用例における伸張比率の記載の有無によつて左右されることはないから、原告の右主張は理由がない。

したがつて、審決が第二引用例を未焼結PTFEを延伸する際の温度として、一〇〇~三〇〇度Cの温度を採用することは知られている例として引用し、右認定の第二引用例の記載に基づいて、「本件発明において、伸張操作を結晶融点よりも低い昇温された温度で施す点に格別特徴があるということはできず、当業者ならば適宜なしうることである。」と認定、判断したことに誤りはない。

4  原告は、相違点(2)、すなわち、本件発明は伸張された成形物品のマトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とするのに対し、第一引用例記載の発明はこの点について言及がないことについての審決の認定、判断を争い、本件発明の骨子は最終PTFE多孔性物品のマトリツクス引張強さが五一四kg/cm2以上となるように中間PTFE成形物品を伸張すること、その伸張比率が毎秒一〇%/秒より大きいことである旨主張する。

前記本件発明の要旨には、「伸張された成形物品のマトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とすることを特徴とする」という記載はあるが、右記載に先立つて、「それによつて」という記載があり、右マトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とする手段が存在することが示されており、その手段とは、その前段に記載の「前記伸張工程において、前記成形物品に対し、単位時間当たりの伸張比率が一〇%/秒より大きな伸張操作を、前記重合体の結晶融点よりも低い昇温された温度で施」すことを指すものと解される。また、前掲甲第二号証によれば、本件明細書の全記載を検討しても、右要旨(特許請求の範囲)に記載された構成要件以外に、別途右マトリツクス引張強さを五一四kg/cm2以上とするための要件が存するものとは認められない。

してみると、前記「マトリツクス引張強さを五一四kg/cm2とする」という記載は、未焼結PTFE成形物品を一〇%/秒より大きな伸張比率と、重合体の結晶融点より低い昇温された温度で伸張するという伸張手段の採択によつて達成される結果を記載しているものと解さざるを得ず、したがつて、本件発明における相違点(1)の点が当業者ならば容易になしうることである以上、前記(2)の点もその伸張の結果として得られるPTFE成形物品のマトリツクス引張強さを測定して決定したにすぎないものであるとした審決の認定、判断に誤りはない。

5  以上のとおりであるから、本件発明は、第一引用例及び第二引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとした審決の認定、判断は正当であつて、審決に原告の主張する違法はない。

三  よつて、審決の違法を理由にその取消しを求める原告の本訴請求は失当としてこれを棄却することとし、訴訟費用の負担及び上告のための附加期間の附与について行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条、第一五八条第二項の各規定を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 藤井俊彦 裁判官 竹田稔 裁判官 濵崎浩一)

別紙図面(一)

<省略>

別紙(二)

<省略>

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